設立趣意書


2006年の小泉内閣の時、社会保障費(医療と介護・年金)の大幅削減(2.200億円/年)が実施され、
医療の現場にも「医療崩壊」と言われた大きなしわ寄せがもたらされた。
リハビリテーションの医療保険における日数制限が初めて導入され「リハビリ難民」という言葉が生まれ、
私の毎日の仕事も激変した。もっと良くなりたい、もっとリハビリを継続したいと願っている患者さんに
対して「終わりの時」を宣言するのが、私の仕事になってしまった。「国の方針だから、仕方がないのです。
医療保険ではもうこれ以上リハビリは続けられないのです」と、残念がっている患者さんたちに宣告する
たびに、私の精神は衰弱していった。
そばにいた妻は、私がかなり深刻なうつ状態になっていることに気付いたようでした。

「経済学の本」をさりげなく紹介してくれ、その中の一冊にアルビン・トフラー著「富の未来」があった。
私は普段なら絶対読みこなせないような経済学の本をむさぼるように読み漁った。
そしてついに「あらゆる産業の壁を越えて結びつくことによってはじめて、新しい価値が生み出される」
という一文に出会いました。私も病院から外へ出てみよう、壁の向こう側の人達と出会ってみようと考え
行動し、この研究会が生まれた。もし私が病院の内側に留まっていたなら、確実に精神の病気になって
いたか仕事を辞めていたことでしょう。研究会である企業の社長さんに言われたことを今でも覚えています。
「先生が本当に世の中の役に立つ事だと思うなら、まず実績を出すことだよ。そうすれば、お金も行政も
後からついてくるから、自分たちはそうやって飯を食べているんだ」この言葉には本当に驚きました。
今までは、医療の現場が良くならないのは、大田区や国、厚労省など行政が悪いからだと考えていましたが、
それは思い込みであり、別の視点や本当のやり方、世の中を動かす方法があるのだと気づかされました。
医療と介護の現場は、日本のあらゆる産業の中でも、思考回路やシステムが最も遅れている分野と思われ
ます。例えば、医療安全の制度「医療事故調査制度」は、一昨年まで世界標準に50年遅れていました。
そういう意味では、企業の皆様にとって、大きなビジネスチャンスが眠っている産業なのです。
そして、医療と介護は、ほぼ永続する安定産業の一つです。

「大田区介護支援研究会」代表 細田悟